初めての深夜アニメ・第2章

 こんにちは、アイです。

 実に2カ月ぶりの投稿でございます。

 なぜこんなにも期間が空いてしまったのかというと気が乗らなかったのとゲームが忙しかったからです(笑)

 さて、前回は私が初めてアニメを観た時のお話をさせていただきましたが、今回はその後編です。

 深夜アニメを家族にバレることなく視聴する手段を得た私はめきめきと知識をつけていき、学校でもクラスメイトの会話に上手く入っていくことができるようになりました。図書室で次シーズンに放送されるアニメのライトノベルを借りて読むという徹底ぶり。当時私は卓球部に所属していたのですが、部内でもアニメの話で盛り上がれる友人を作ることができました。部活の練習はハードでしたが、友達とのおしゃべりがそれを乗り越えさせてくれたのです。

 斯くして学校生活が文武の両面で充実してきた私なのですが、ここで予期せぬハプニングが起きてしまいます。

 リアルタイムで観ることのできないアニメを録画しておいたことは前回お話ししましたが、それが仇となったのです。

 それは何気ない夕食時でした。家族でリビング(テレビのある部屋)に集まって団欒のひと時を楽しんでいる最中、ふと父親が

 『この前やってた映画ちゃんと録画されてるかな』

 と呟きました。その瞬間、視界は玉虫色になり、一瞬にして何も考えることができなくなりました。

 そうです。録画画面を開けば、私が録り溜めてきた数々の深夜アニメがレストランのメニューよろしく『なんでもござい!』と言っているかのように溢れ出てくるのです。

 当時の私は家族の誰かが録画画面を開くという十二分にあり得る可能性を完全に無視していました。何という致命的かつ初歩的なミス。生まれる時が違えば私は最低な軍師であったでしょう。

 ともかく今は夕飯時です。春秋戦国時代ではありません。父親の手がリモコンにのびていくに連れて、頭の中で今まで観てきたアニメの名場面がダイジェストで流れていきます。かといって私には父の手を止める理由がありません。そして蝉が地上で生涯を終えるよりあっけなく、その頁は開かれてしまいました。

 『ん…?何これ。「サムライフラメンコ」。誰か録った?』

 深夜アニメとは無縁の父親の口から紡がれるタイトルはどこか新鮮で、私の耳に確かな存在感をもって入ってきます。

 『これ××の?』

 まず初めに父親は私より一回り年上の兄弟に聞きました。もちろん彼は首を横に振ります。

 『○○?』

 続いて私のターンがやってきました。ドローする必要はありませんが何か言わなければなりません。私は脳細胞を総動員させて文章を組み上げていきます。できるだけ理にかないつつも恥ずかしくない言い訳を答えられなければこの団欒の雰囲気が悪くなってしまいます。私は意を決して口を開きました。

 『あっ。うん。ちょっと。』

 何という語彙力のなさ。主語が完全に欠落しています。

 あのような短時間で頭が回るわけもなく、私は肯定という最低限の意味しか持たない返答をしてしまったのです。考え得る中で最悪の出目です。「うわー。完全にやっちゃったよ。どうしよう。」と落ち込んでしまいました。

 すると父親が、『ふーん。観たらすぐ消してね。もう空き容量少ないから。』と言うだけで私をからかったりはしませんでした。家族は変わらず夕食を楽しんでいます。てっきり恥ずかしい趣味をイジり倒してきて、そこに兄弟や母親も加勢するこの世の地獄をイメージしていた私の前に一筋、また一筋と光が差しました。

 地獄に仏とはまさにこのこと。父親のみならず私の家族はこの趣味に寛容だったのです。

 こうして無事(?)家族からも正式に認められた私は親元を離れた今でもこの趣味を続けられています。もしあの時酷い目にでも遭って、アニメ観賞を断っていたとしたら、今の私はどうなっていたか想像もつきません。今までの人生で経験してきた全てが今の私を作っているんだなぁ…とこの記事を書きながら感じています。背筋を伸ばして生きていきたいです。

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